教育コラム

映画ビリギャルで学ぶ 子どもの「可能性を高める大人」と「可能性をつぶす大人」

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今回は、少し古い作品ですが、映画ビリギャルに関連した記事です。映画の見所などをまとめた記事は、こちらの過去記事も見てください。

家族でぜひ観てほしい映画 「ビリギャル」 ビリギャルから学ぶポイント
では、今回は子どもの可能性を高めることができるのかどうかは、周りの大人の影響が大きいという点から子どもへの接し方はどうするべきなのか?といったテーマでみてみましょう。

まずは、過去記事でざっくりと映画の概要をチェックしてみて下さい。

映画の登場人物から取り上げたい大人は、主人公のさやかちゃんの塾の先生の「坪田先生」、お母さんの「あぁちゃん」、学校の先生とお父さんです。

子どもの可能性を高める大人

では、簡単に登場人物のポイントをまとめます。可能性を高める大人としては、坪田先生とあぁちゃんをあげます。

坪田先生(伊藤淳史さん):さやかちゃんを指導する塾の先生。さやかちゃんが、お母さん以外で初めて自分の未来を信じて本気になってくれた大人として描かれています。

お母さん 「あぁちゃん」(吉田羊さん):さやかちゃんの一番の理解者でどんな時も子どもを支える。大学合格のために週6回の授業が必要になり、授業料を工面しないといけなくなったときも自らパートにでて支え、さやかちゃんが学校で問題を起こしても、一方的にしかりつけることもなく、子どもを信頼して支えてくれたお母さん。子どもたちにきらきらした人生を送ってほしいと願っている。

まず、二人にいえる共通点は、子どものことをとことん信じてあげる事ができるかどうかという点です。先生も、さやかちゃんに勉強をしてもらうために、東大や慶應などかなり高い目標設定を初めからしていました。楽天的な性格や芯がしっかりしているところを見抜いてか、どうせやるならレベルの高いものを提示しています。東大ではなく、慶應なのはイケメンがいそうだからという理由のようです。きっかけは、どうであれ、明るく、楽しませながらも子どもを本気にさせていきます。もし、今の成績だと○○大学しか無理だからといった提案だったら、結果は違っていたでしょう。

さらに、坪田先生は、楽観的な提案のように見えても、大学のレベルの高さや合格するには、かなりの勉強量も必要なこと(高3時点で週6回の授業をお母さんに提案している)もしっかりと伝えています。結果的に合格した慶応義塾大学(SFC)は論文の配点が高いので、論文の能力が高かったから合格できたと思いがちですが、そもそも、受験戦略としては文学部狙いで、SFCは記念受験程度、基本的に、英語、国語、日本史を強化して、論文も底上げするといった具合でかなり堅実な作戦です。授業数を増やす提案をしていることからも、突拍子もない作戦ではなく、堅実に勉強をさせて実力を付けていったのでしょう。

そして、お母さんの存在がさらに大きいです。お母さんは、基本的には、どんなに、さやかちゃんが学校で問題児扱いされても、根がいい子であることを知っているだけに、何と言われても子どもを信じて守り通しています。とがめたり、叱ったりするのではなく、子どもの笑顔が見れるだけでも幸せ、子どもがきらきらとした人生を歩んでほしいという願いを持って接しています。さらに、塾の費用など経済的な面でもサポートしていきます。

子どもの躾といった面では、一見、十分躾のできていない「ダメ親」のレッテルを貼られそうですが、学校の先生やお父さんに何を言われてもやり通す強さも持っています。

 

子どもの可能性をつぶす大人

子どもの可能性をつぶす大人としては、劇中の人物では、お父さんと高校の先生をあげます。

お父さん(田中哲司さん):さやかちゃんのお父さん。自身も元野球少年ということもあり、息子には、期待過剰で家では、野球少年の弟ばかりかまっている。さやかちゃんと妹は母親に任せきり、初めは、さやかちゃんの慶應大学挑戦も否定的だったが、次第に変わっていく

高校の先生(安田顕さん):さやかちゃんの高校の先生で、素行の悪い生徒は「くず」呼ばわりする。作品の演出上か坪田先生とかかなり対照的に描かれている。前半のお父さんと同様、子ども可能性をつぶすタイプの大人として描かれている

可能性をつぶす大人と書いていますが、劇中では、お父さんも高校の先生もさやかちゃんの成長に従って、次第に変わっていきます。ここでは、ある時点の子どもへの接し方として取り上げたいと思います。

まずは、お父さんですが、息子に対する野球の指導に見られます。お父さん自身も野球少年で、可愛い一人息子に自分の夢を託してしまい、過剰に期待をかけてしまっています。基本的にこのケースは、子どもも親の期待にこたえたいために、上手くいっている時は、表面的には上手くいきます。しかし、子どもが、ある時点で挫折を味わい、そのプレッシャーに打ち勝つことができなくなると、マイナス方向に向かいます。劇中では、さやかちゃんの弟や玲司君が一時期ぐれていたのがその例でしょう。

次に、先生ですが、素行の悪い子をくずと捕らえ、実際に、子どもにも言ってしまっています。通常は、このようなネガティブな言い方をされて、心から素直に接することはないでしょう。さやかちゃんは高校の友達もそうですが、反抗的な態度をとるか表面的にはしたがっているように見えるが、心の中では、信用していないといった状態になり大人の意図する方向へ引っ張っていくことは難しいと思います。

さらに、一番の弊害は、子ども自身が、自分は何もできないくずだと思い込み、そこから脱することができなくなることです。これは、かなり深刻で、くずだったらどうせ努力しても無駄、できるわけがないと自己暗示のように子どもの心に巣食ってしまうのです。

特に親から言われると場合によっては立ち直れないこともありえます。私が接した子にもそういう子がいましたし、自身を取り戻すまでに、他の子よりもかなり時間がかかります。

 

このように、子どもの接し方で、子どものその先の人生がかなり変わっていしまうということを大人はきちんと把握しておくべきでしょう。